中央線の沿線と、古本屋の文化

中央線の沿線には、中野、高円寺、荻窪と、古本と音楽と古着の街が続いています。高円寺もそのひとつ。古着屋やライブハウスが多い街ですが、路地に入ると小さな古本屋や、本にまつわる変わった店がぽつぽつと見つかります。急がず、寄り道を許すのがこの街の歩き方です。今日は朝から日が暮れるまで、のんびり巡ってみましょう。

北口・純情商店街からスタート

高円寺駅北口を出てすぐの純情商店街から歩き始めましょう。アーケードの下に飲食店や雑貨店が並び、昼前から湯気と人の声でにぎわっています。商店街の脇道にも古着屋や古本屋が潜んでいて、一軒ずつ確かめるように進みます。看板の文字が読みにくい店ほど、いい店だったりするのがこの街の常で、今日もその予感がします。

古本酒場コクティル書房

商店街から北へ数分、高円寺北の住宅街にあるコクティル書房は、古本屋でありながらご飯とお酒が楽しめる「古本酒場」です。昼は古本を眺めながら軽い食事を、夜は酒を酌み交わしながら本の話をする。棚の本は買うこともできて、気に入った一冊をその場で読む人もいます。本を介して人が集まる場所の理想形のような店です。昼過ぎに訪ねましたが、すでにカウンターは常連さんでにぎわっていました。

絵本の古書店、えほんやるすばんばんするかいしゃ

絵本の古書店、えほんやるすばんばんするかいしゃは、寺村輝夫の作品から名づけられたという長い店名で知られています。絵本の古書を扱う店は全国でも珍しく、絶版になった作品の初版を見つけられることもあります。子どもの頃に読んだ絵本との再会は、大人になってからが一番こたえます。店の中は絵本の世界そのままに、静かで、少し不思議な時間が流れていました。

パル商店街と南口の古書店

駅の南側、パル商店街にも目ぼしい店があります。古着屋に交じって、文庫をワゴンで売る店や、雑誌を扱う小さな古本屋が点在しています。500円均一の箱を覗き込むと、思いがけない作家の一冊が眠っていたりします。南口は日が落ちるとライブハウスの灯りが増えて、昼と夜で顔が変わります。夕方の早い時間は、古本屋と古着屋が入れ替わる、いちばん落ち着かない時間帯です。

阿波おどりの季節と、夜の古本

8月末の高円寺阿波おどりは、この街のいちばん熱い日。商店街が踊りの列で埋まり、夜遅くまで祭りの声が響きます。そんな日に古本屋を覗くと、店の人はのんびりとした顔で「今日は祭りだよ」と笑います。観光客の波が引いた夜、祭りの熱が残る通りで古本を抱えて歩くのは、高円寺にしかない贅沢です。本と祭りが同居する街。それが高円寺です。

ゆっくり巡る一日のまとめ

一日のまとめです。10時半に純情商店街をぶらぶら歩き、11時半にコクティル書房で昼の本酒場を楽しみ、13時に絵本の古書店へ。15時にパル商店街の古本屋を巡り、16時に喫茶店で一休み。夜はもう一度、灯りのともった古本屋をのぞいて帰ります。一日で十冊近く手に取れる、欲張りな街です。高円寺の歩き方のコツは、目的を一つに絞らないこと。きっと、どこかの棚で待っています。