神保町はなぜ「古書店の街」になったのか

神保町という街は、古書店が150店ほど集まる、世界でも類を見ない古書店街です。明治時代、このあたりに大学や出版社が相次いで生まれ、学生や編集者相手の本屋が自然と集まったのが始まりと言われています。いまも靖国通りとすずらん通りのあいだに、老舗の古書店が軒を連ねています。歩く前にこの背景を知っておくと、店の棚が「誰のための棚か」で見えてきます。

まずは三省堂書店で「新刊」の空気を

歩き始めの目印にするのが、神保町駅A7出口から靖国通りへ出てすぐの三省堂書店神保町本店です。朝10時から夜9時まで開いている大型書店で、まずはここで新刊の棚を眺めておくと、この後の古書店めぐりの「いまの基準」ができます。地下1階の文庫コーナーは広く、話題作の顔ぶれを確認するのにも便利です。なお、土日祝日は夜8時までの営業です。

靖国通り沿いの古書店を西へ

靖国通りを西に向かって歩くと、通りに面した古書店が次々と現れます。美術書で知られる小宮山書店、自然科学と哲学の棚が深い田村書店、洋書を扱う明倫館書店。どの店も入り口に平台があり、値段の書かれた本が積まれています。まずは平台の一冊を手に取って、棚の雰囲気を確かめるのがおすすめです。奥の棚まで見たいときは、一声かけてから入っていくのが礼儀です。

すずらん通りで一休み

靖国通りから一歩入ったすずらん通りは、古書店と喫茶店が混ざる通りです。歩き疲れたら、老舗喫茶店のさぼうるで休憩しましょう。目の前のコーヒーを飲みながら、買ったばかりの文庫を開く時間は、この街の特権です。すずらん通り沿いには100円均一のワゴンを出す店もあり、気軽に一冊増やせます。大きな荷物は脇に置いて、手ぶらで棚に向かうのが正しい姿勢です。

裏通りへ、専門店ぞろいの路地

すずらん通りから細い路地に入ると、専門店が並んでいます。演劇や映画の本が揃う矢口書店、洋書の古書を扱う北沢書店、活字の状態が良いと評判の大雲堂書店。どの店も小さく、棚の間をすれ違うのがやっとです。それでも、どの店にも「この棚だけは負けない」という領域があって、探す人を飽きさせません。路地の突き当たりで行き止まりになったら、引き返すのもまた楽しい。

買い物のコツと、古書店のお作法

古書店での買い物のコツを少しだけ。まず、値段交渉は基本的にしません。値札は店主がつけた信用です。次に、本の状態はカバーや背表紙だけでなく、奥付の発行年月日を確認すると、初版かどうかが分かります。そして、買った本は店の紙袋ごと大切に持って帰りましょう。一冊の目安は300円から1,000円ほど。予算を決めて歩くと、迷いがずいぶん減ります。

半日のモデルコース

最後に、半日のモデルコースです。11時に三省堂書店で新刊チェック。12時ごろ、古書店の平台を眺めながら軽い昼食。13時から15時まで、靖国通りとすずらん通りの古書店をめぐり、15時半に喫茶店で買った本を読み始める。夕方の6時には、どの店も閉まり始めます。帰り道、紙袋の中の一冊を思い浮かべながら靖国通りを振り返る。それが、神保町の歩き方です。