神楽坂の石畳、坂の上の街

飯田橋駅から歩いて五分、神楽坂の石畳は、ゆるやかな坂です。料亭やお寺の多いこの街は、都心でありながら路地の奥に古い時間を残しています。坂の途中には、大きな書店はありません。その代わりに、小さな本屋やシェア型の書店が、路地の奥にひっそりと並んでいます。

シェア型書店「本の長屋」

神楽坂の「本の長屋」は、誰でも棚を借りて本を売ることができるシェア型書店です。一区画の棚に、店主それぞれの選んだ本が並びます。小説、写真集、ZINE、古本。棚ごとに手書きの説明があり、歩くだけで何人もの人の本棚をのぞいた気分になります。

本の長屋は、棚主さんが交代で店番をしています。だから、同じ棚でも、訪れる時間によって雰囲気が違います。店番の人に「この棚、いいですね」と話しかけると、棚主さんの話まで聞けます。

善國寺の参道と、小さな店

毘沙門天で知られる善國寺の参道には、和菓子屋や雑貨屋が並びます。その合間に、小さな本を扱う店があります。お寺の行事の日に合わせた本、季節の文庫。観光の人の足が止まる場所に、本が置かれています。

参道は、朝のうちがいちばん静かです。開店したばかりの店で、本を一冊買いました。

路地の本屋、のれんの向こう

路地を一本入ると、のれんを掲げた小さな店が見えてきます。夜になると灯りのつく本屋で、仕事帰りの人が立ち寄ります。棚は数十冊だけ。それでも、店主がこの街のために選んだ本が並んでいます。神楽坂の本屋は、大きくないけれど、街の時間に寄り添っています。

のれんの向こうの店は、夜の九時まで開いていました。買った本に、紙の袋をかけてくれます。袋には店の名前が印刷されていて、帰り道も本屋の時間が続きます。

食べ物横丁と、読む時間

神楽坂には、古い食べ物横丁があります。焼き鳥とビールのあとに、本屋へ寄る。そんな夜の過ごし方が似合う街です。私は横丁で一冊読みかけの文庫を買いました。

横丁の店は、どの店も小さいけれど、椅子が用意されています。焼き鳥を待つ間に本を開く。食べて、飲んで、読む。神楽坂の夜は、本にちょうどいい時間です。

坂を下りて、一冊

坂を下りて、帰り道。神楽坂の本屋は、目的の本を探す場所ではありません。歩いているうちに出会う場所です。次は、どの路地を曲がろうか。坂の上の棚を思い出しながら、歩きました。