中野は、迷うためにある街
中野駅の北口を出ると、サンモール商店街のアーケードが伸びています。駅から歩いて3分、ふれあい通りの角を曲がると、中野ブロードウェイです。このビルは、昭和の香りを残したまま、本と雑貨の迷路になっています。古本屋の棚は通路にはみ出し、行き止まりのような角に、小さな店が隠れています。地図があっても迷います。中野は、迷うことを楽しむための街だと思います。
ブロードウェイ地下の古書店たち
ブロードウェイの地下は、開店前の11時でも静かです。通路沿いに並ぶ古書店は、それぞれ棚の色が違います。文庫をびっしり並べた店、雑誌を年代順に積んだ店、映画のスチール写真を扱う店。どの店も、店主の趣味が棚にそのまま出ています。声をかけると、そのジャンルの話を気さくにしてくれます。私は映画の古本を扱う店で、昭和30年代の文庫を300円で買いました。
まんだらけの棚、漫画と時代
地下から上がると、まんだらけのフロアです。ここは漫画やアニメの専門店ですが、古書店としての顔もあります。昔の漫画雑誌が年代順に並び、子どものころに読んだ作品の初出が、棚に眠っています。値段は、状態によって大きく変わります。表紙の色あせた一冊が500円、同じ号でも保存状態のいいものが5,000円。値札を見ながら、時代を歩いている気分になりました。
100円均一の箱から、一冊
私のお気に入りは、店先に置かれた100円均一の箱です。雑誌、文庫、映画パンフレットが雑に詰まっていて、掘り出し物はここから出てきます。この日は、昭和の旅の雑誌を見つけました。箱の中の本は、どれも誰かの家にあった本です。ページを開くと、しおり代わりのレシートが挟まっていることもあります。100円で買える物語の入り口が、ここには並んでいます。
サンモール商店街と、駅前の書店
ブロードウェイを出て、サンモール商店街に戻ります。アーケードの下には、果物屋、乾物屋、そして小さな書店が並んでいます。駅前の書店は、通勤の人が立ち寄る帰り道の本屋です。新刊の平台には、週末に読む一冊が平置きされています。商店街の活気と、地下の静けさ。中野には、二つの本屋の時間が流れています。
迷ったあとの、おみやげ
最後に、ふれあい通りでおみやげを探しました。古本屋で買った文庫と、商店街で買った焼き鳥。中野の本屋は、目的の本を探す場所というより、迷って、立ち止まって、何かと出会う場所です。一日かけて迷ったあとに手にした一冊は、帰りの電車で開きたくなります。次は、どの角を曲がろうか。中野は、まだ迷い足りません。