新書という、ちょうどいいサイズ

新書は、新刊でも文庫でもない、ちょうどいいサイズの本です。二時間もあれば読み終えられる厚さで、値段も文庫より少し高い程度。通勤の往復で一冊、という使い方ができます。神保町には、この新書がたくさん並んでいます。書店も古書店も、新書の棚をていねいに作っています。

三省堂書店、九階の新書棚

三省堂書店神保町本店は、地下から九階まで続く大きな書店です。新書のコーナーは階をまたいで広がり、出版社ごとに棚が分かれています。岩波新書、ちくま新書、講談社現代新書。同じテーマでも、どの出版社がどう語るか。棚を見比べるだけで、半日は過ごせます。

三省堂では、新書の帯やカバーを読むのが好きです。帯に書かれた一言は、編集者がその本のために選んだ言葉です。私は新書の棚の前で、帯を三冊分読んでから、一冊を選びました。

赤い帯の岩波新書

岩波新書の赤い帯は、神保町の風景の一部です。一冊千円前後で、昭和の初めから読み継がれてきたシリーズです。歴史、科学、文学、社会。幅の広さがこの棚の特徴で、新しい巻と古い巻が同じ背表紙で並びます。私は歴史の棚で、半世紀前に出た巻を見つけました。

岩波新書は、専門の学者が一般向けに書く本として始まりました。難しいテーマを、丁寧に、読みやすく。その伝統は今も続いていて、新しい分野の入門にちょうどいい一冊が並びます。

専門書店の新書、書泉の棚

書泉グランデの新書棚は、実用書と学び直しの棚が強い印象でした。ビジネス書の新書、資格の入門書、数学の読み物。神保町の専門書店は、それぞれのジャンルの新書を深くそろえています。同じ新書でも、店によって並び方が違う。それが神保町の愉しみです。

古書店で出会う新書

古書店にも、新書の棚があります。靖国通りの店先に並ぶ箱には、昭和の新書が百円や二百円で並んでいます。いま読んでも色あせない内容と、古い帯のデザイン。古本の新書は、時代の空気ごと読めるお得な一冊です。

古い新書の装丁は、今の本より遊び心があります。手書きの文字のような書体、大胆な色づかい。昭和の新書を開くと、その時代のデザインと一緒に、当時の読者の視線が伝わってきます。

帰り道の新書

最後に、三省堂で新刊の新書を一冊買いました。神保町で買う新書は、本の内容に、街の歴史が添えられる気がします。帰りの電車で、赤い帯の一冊を開きます。